日本作詩家協会50周年記念大賞

第3回 日本作詩家協会50周年記念大賞 授賞作品発表

「素敵な歌への出発」コラボ新企画に寄せて     会長  喜多條 忠

 城之内早苗さんが唄ってくれる歌に、なんと八五一編もの作品の応募がありました。嬉しい限りでした。
理事全員で真剣に選考しました。

 歌は詩があって曲があって初めて歌となる。そんな当然の作業を原点から築き上げていこう、我々は日本作曲家協会の方々とヒザをつき合わせ、両方の会員の人達が創った歌を世に出していこう。
その想いの第一歩がこの二つの団体のコラボ第一回として結実します。
 作詩家協会五〇周年記念式典セレモニーの場で今回の大賞二つは発表され、作曲家協会の手に渡され、会員の作曲作品から選ばれて、CD化されることになりました。
 この企画をきっかけに、我々は続々と新しいコラボ企画を立ち上げてゆくことでしょう。
次には作曲家協会会員の作ったメロディーに我々協会会員が詩をつけてゆく企画、そして来年度には、詩、曲、合同の旅行会…等々。そんな大きな夢への扉が、この企画から開かれてゆこうとしています。

大賞

演歌部門「おちょこ鶴」  内田 りま

お箸の袋を ちぎって折って
小さな鶴を こしらえました
あなたの席の おちょこに添えて
早く来てねと おまじない
わたしみたいな おちょこ鶴
あなたまだかと 待ってます

おこったみたいに 無愛想だけど
照れてるせいと わかっているの
ふたりの時は 優しくなって
じんと温もり くれるひと
あなた恋しい おちょこ鶴
酒の(みぎわで 待ってます

あなたのお好きな おでんと煮込み
急いで来なきゃ 冷めちゃいますよ
はにかむ笑顔 見られるならば
冬の寒さも 耐えられる 
ちびりちびりと おちょこ鶴
春を夢見て 待ってます

講評 : 喜多條 忠

 いい歌と呼ばれるものには、いくつかの共通点が必ずあります。
まず日々の暮らしを深くみつめてテーマを見つけること。そして柔らかな感受性で香り高い詩に仕立て上げること等が、重要なファクターでしょう。

 「おちょこ鶴」は誰もが「あるある」と共感できる情景を新鮮な切り口とリズムで、最初の四行で決め切っています。
そして女性ならではの豊かでやさしい想いで、間もなくお店にやってくる恋人をも描き切っています。
 「おちょこ鶴」というタイトルも卓抜したアイデアです。
多分、内田さんが考えた「造語」ですね。しかも誰も書いていない造語、素晴らしい!見事!としか言いようがありません。
「ふたりの春」を予感させるフィニッシュも決まっていますね。
 僕も城之内早苗さんには、ここの所、七作も書いていますが、こんな可愛い歌はかけなかったなァと素直に思います。脱帽です。


歌謡ポップス部門ななばしわたり」  小宮 正人

無言で渡り 願い事
七つの橋を 振り向かず…
常盤橋ときわばしから 不器用なりの
背を押す瀬音は 浅野川あさのがわ
  生きがいずっと あなただけ
  離ればなれを 耐えてます
  古都に伝わる 習わしで
  逢える日祈る ななばしわた

届いた手紙 いとおしく
加賀友禅かがゆうぜんの 胸元に…
待たせ続けて すまないなんて
気遣う綴りに ほろほろと
  いいのよ夢を 追う人に
  惚れた覚悟は しています
  あなた支えて 暮らす日が 
  川面に浮かぶ ななばしわた

  昌永橋しょうえいばしを 七つ目に
  せめて連れ添う おぼろ月
  きっとふたりで 幸せの
  お礼に来ます ななばしわた

講評 : 久仁 京介

 古都金沢に伝わる古い習俗で「七つ橋渡り」がある。
浅野川にかかる橋の七つを無言で振りかえらずに渡りきる風習のようで、そのご利益には無病息災や大願成就、他がある。
 唄いだしでそれについて触れ、夢を追う男性の大願成就を信じて待つ健気な女性が描かれている。

愛し合う二人のやり取りを中心に物語が展開し、「七つ橋渡り」の風習には触れるが、決して深入りしない。その構成がわかりやすく、好感がもてる。
 そして、願いが叶った時には、きっとふたりでお礼に来ると、「七つ橋渡り」の仁義にのっとった締めくくりが上手く心憎い。

 小宮さんはとても真面目な人。時にはそれが作品に硬い印象を与えるが、今回は硬軟バランスのいい仕上がりになっている。

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優秀賞

「浮かれ酒小唄」  紺野 あずさ

きついこはぜの 白足袋と
赤い湯文字は 夜の花
すすめ上手に 受け上手
惚れちゃだめだめ 浮かれ酒
火傷しそうな 熱燗を
差しつ差されつ 膝が酔う

細身マッチョな 男振り
上着脱がせた 手が言うた
浮かれ上手に 浮き上手
ふたりしみじみ 重ね酒
しっぽり都々逸 口ずさみゃ
妻の噂に 腹がたつ

たった一夜の 添い寝でも
隠しきれない 色が出る
抱かれ上手に 抱き上手
帰っちゃいやいや 浮かれ酒
明けの烏の 野暮声を
聞かせないよに 耳朶みみを噛む


明日あした橋」  内田 和美

桜五分咲き あと五分は
あなたの胸で 咲かせたい
ひとりで生きた 片意地かたいじ
水面みなもに解けて 消えました
涙の花街 ぬけだして
あなたと渡る 渡る 明日橋

母の形見の 着物だと
優しく肩に かけてくれ
おまえの苦労 もらったと
さかずきかわし 云った人
あなたの情けを 忘れずに
あなたを見つめ 見つめ 明日橋

春のぬくもり つつまれて
桜もじきに ふりそそぐ
この世に運命さだめ あるならば
あなたとここで ったこと
馴染なじみの地蔵さん 手をあわせ
あなたと進む 進む 明日橋

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佳作

無言詣むごんもうで」  小宮 正人

八坂神社やさかじんじゃが 振り出しで
四条御旅所しじょうおたびしょ お参りに
恋の成就を やすらぎを
七度ななどかよって 祈ります
  祇園祭ぎおんまつりの ならわしで
  言葉は誰とも 交わせない
  あなたの迎えを 待ちわびる
  無言詣むごんもうでは 月が道連れ

浴衣姿ゆかたすがたが 似合うよと
声を聞かせて 京の宵
浮かぶ面影 滲みます
噂たっては 駄目な恋
  きっといつかは 晴ればれと
  向日葵ひまわりみたいに 咲きたくて
  寂しさ流すわ 鴨川かもがわ
  無言詣むごんもうでは 夢をいざなう

  後ろ姿が 似た人を
  あなたの名前で 呼びそうで…
  今すぐあの胸 甘えたい
  無言詣むごんもうでは 愛に一途いちず


「さわさわ小江戸」   髙木 知明

相合傘に 声かけられて
てれるあなたの 横顔が好き
幼なじみが まわり道
たどり着いたの たがいの胸に
  柳もさわさわ ささやく小道
  小江戸佐原は 小江戸佐原は
  やさしい 春の雨

昔と同じ 瓦の屋根が
しずくに濡れて あかるく光る
祭り稽古の 笛の音
ハッピ姿も 待ち遠しくて
  今年もあやめは きれいに咲いて
  小江戸佐原は 小江戸佐原は
  いとしさ つのる町

小野川沿いの 十二の橋は
一度はなれた 心もつなぐ
細い路地にも 幸せが
きっと来る来る 手をとり合って
  柳もさわさわ 寄り添う小道
  小江戸佐原は 小江戸佐原は
  あなたと 生きる町


「花夜叉」  たにはら 伸

桜の花びら 口に含んで
あなたの寝顔に 散らします
奪われたくない 他の誰にも
恋夜叉 花夜叉 私です
  好きよ あなただけ 好きなのよ
  百花繚乱 咲いて 乱れて
  破れて 泣いても
  恨まないのが 女です

こはぜをはずして 足袋をもぎ取り
素足のほてりに くちづける
不埒な男と 他人ひとは言うけど
恋夜叉 花夜叉 惚れました
  抱いて いつの夜も 抱きしめて
  三千世界の 花が 枯れても
  カラスが 死んでも
  悔やまないのが 女です

  好きよ あなただけ 大好きよ
  恋のいくさに 例え 誰かが
  泣いても 勝ちたい
  それが花夜叉 女です


「花いちもんめ」  原 あきら

いくら好きでも 世間の風に
負けてくやしや 花いちもんめ
赤い鳥居の 天神さまで
誰が歌うか わらべ唄
惚れたあの人 この指とまれ

忘れられない あなたの笑顔
未練かなしや 花いちもんめ
恋の重さは 天びん棒じゃ
測れないのよ 野暮ですよ
惚れたあの人 この指とまれ

泣いてみたって もどっちゃこない
燃えたひと夜の 花いちもんめ
赤い社の 天神さまで
あなたご無事と 祈ります
惚れたあの人 この指とまれ


秋思しゅうし」  山吾 充六

湘南電車が 行き過ぎる
窓辺で紅茶を 入れてます
ぼんやり季節を やりすごし
別離わかれのあれこれ なぞっています
  電話なんかで 泣かないで下さい
  夏が終われば 恋も終わると
  終止符を打ったのは あなたです

九月の潮風 うけながら
浜辺に足跡 つけてます
ぼんやり来た道 ふりかえり
別離わかれの夏の日 なぞっています
  電話なんかで 泣かないで下さい
  夏をうしろへ 追いやるように
  アクセルを踏んだのは あなたです

  電話なんかで 泣かないで下さい
  秋の浜辺に足跡つけて
  消えてゆく恋の跡 見ています
  きしきしと泣く砂を 聴いてます

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準佳作

奥会津雪譜おくあいづせっぷ」  磐根 公太郎

募る想いと おんなじ様に
雪は六尺 まだつも
待っていろよと 肩抱きよせた
貴方あなた今ごろ 何処どこにいる
春よこいこい 早く来い
一人ぼっちの 囲炉裏端いろりばた

出世なんかは しなくていいよ
髪に山吹やまぶき 差した人
一度吹雪けば なんにも見えぬ
雪に埋もれた 桧枝岐ひのえまた
いとこいしと 身も世もこが
今日も更け行く 山里さとの夜

恋の炎じゃ この雪とけぬ
夢の主役は 貴方あなただけ
明日あすの日和は みぞれか雪か
氷柱格子つららごうしの 窓の外
春よこいこい 早く来い
指を折っても まだ三月みつき


「おんなの峠」  岡 みゆき

忘れる旅の 信濃路に
千曲の雨が 胸に降る
抱かれてしまえば 女は変わる
時のながれに 男は変わる
別れの峠 越えたのに
未練の峠が 越せなくて

指先でいい 今すぐに
触れてほしさに 叫んでる
一年経っても 男のうそに
二年経っても 気づかずいたの
いくつの峠 越えたなら
しあわせ峠に さしかかる

もいちど春の 花が咲き
風がせつない 秋になる
あやまち許せば 済むことでした
がまん少しで 済むことでした
見返り峠 越えたのに
悲しみ峠が 越せなくて


「南部風鈴」  川村 圭

山背 それとも 未練風
改札出れば 風の町
三戸 ここに あなたがいるの
ふと呟けば せつなくて
チリン… チリリン… 店先で
南部風鈴 あなたを呼ぶわ

故郷くにで一緒に 暮らそうよ
この肩抱いて 言ったひと
うつむいたこと 悔やんでいます
都会の暮らし 捨てられず
チリン… チリリン… 泣くように
南部風鈴 私を叱る

風を凌いで 日暮れ道
凌げど寒い 恋心
ふたりで ここで 暮らそと言って
返事をさせて その胸で
チリン… チリリン… 夢越しに
南部風鈴 あなたを呼ぶわ


女鵜匠おんなうしょう犬山いぬやまの女)」  京 一郎

燃える篝火かがりび 夜空をこが
夏の鵜飼うかいの 幕が開く
つらい修行に 耐えて今
女鵜匠おんなうしょうの 手綱たづなが光る
ここが勝負の ここが勝負の長良川ながらがわ

出来るものかと 嘲笑わらわれ泣いた
悔し涙の 袖絞そでしぼ
十二手綱じゅうにたづなの 手捌てさばきに
人がどよめく 舟辺ふなべたく
これがわたしの これがわたし晴舞台はれぶたい

かぶる火の粉も 何のその
水面みなもを進め 鵜飼船うかいぶね
風折かざお烏帽子えぼしに 腰蓑こしみの
似合う笑顔は べにいらず
これが勝負の これが勝負の長良川ながらがわ


「友禅恋流し」  保岡 直樹

葛籠つづらあければ 色とりどりの
思い出かなしい 絹の海
あなたが見立てた 友禅の
花はいまでも 咲いたまま
梅に鶯 あの日のふたり
どこへいったの はぐれ鳥

合わせ鏡も 吐息で曇る
身丈に合わない 恋ですか
こころの奥まで 色を
明日あすをぼかして 抱いたひと
あなた移り気 片町かたまちあたり
風のうわさに みだれ髪

なさけたて糸 夢よこ糸に
しあわせ織りたい もういちど
六日むいか菖蒲あやめか 十日菊とおかきく
呼んでみたって もうおそい
冬の犀川さいがわ 友禅流し
洗い流して この涙


「おんなの昭和」  みやび 恵

尽くし 尽くして 待つことが
操と 信じて 生きた母
大事な 心と 知りながら
時代 遅れと 恥じらった
どこに 仕舞おう おんなの昭和

向こう 三軒 両隣
みんなで 貧しさ 分け合った
缶けり ゴム跳び 隠れんぼう
路地に 溢れる 笑い声
淡い しあわせ あの日の昭和

愛を 欲しがる ことよりも
愛する しあわせ 知りました
氷雨に 凍てつく 季節でも
凛と 根を張る 大和撫子なでしこ
母が 残した おんなの昭和


「人生かるた」  吉井 省一

いろはにほへとで 恋をして
ちりぬるをバカで 捨てられた
出逢う 別れる また出逢う
四十八個の 泣き笑い
めくってうれしい 人生かるた

「女の歩けば 恋をする」
「論より証拠」の口紅べにの色
惚れて ふられて また惚れて
捧げつくして 朝が来る
駆け引き苦手な 人生かるた

「楽ありゃ苦あり」の 人の世にゃ
「嘘からまこと」の 愛もある
燃えて 冷めては また燃えて
酔って咲かせる 情け花
勝ち負けあいこの 人生かるた

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