日本作詩家協会50周年記念大賞

第2回 日本作詩家協会50周年記念大賞 授賞作品発表

総評 : 喜多條忠会長

来年の作詩家協会設立50周年記念に向けて、昨年度から始まった「50周年記念大賞」は年末の「日本作詩大賞・新人賞」とは違って、会員のみが応募出来る作詩賞である。従って相対的にレベルアップされた作品が集まることとなり、審査は熱を帯びたものとなっている。
今年も全国の会員から総数765編もの応募が寄せられ、理事全員が厳密な審査に長時間を費やした。

昨年の受賞作は、今年鳥羽一郎さんによってリリースされたばかりだが、実は、この新設の記念大賞は、作詩大賞新人賞とは違いCD発売は約束されていない。その分、歌手とのシバリを考えないで、もっと自由な作品と新しい才能の原石を発掘、展開していこうとの狙いがあったからだ。
それでも鳥羽一郎さんサイドより是非リリースしたいとの熱望があり、実現したのは嬉しいことだった。

今回も熱い作品と将来性が望める秀作が多かった。
大賞の原 文彦さんを始め、池上二郎さん、祐田 彰さんの二編の優秀作も、その発想の豊かさと日常への鋭い視点が群を抜いていたと思っている。

大賞

「 居酒屋「みなと」」  原 文彦

入り船みたいに 人が来て
出船みたいに 人が
まるで港の ような店
あなたというの さすらい船を
きょうも待ってる かもめがいます
 酔ってそうろう 居酒屋「みなと」

いかりを降ろしちゃ くれまいか
せめて一晩ひとばん この膝に
それが言えない うぶな恋
演歌がこぼれる 路地裏あかり
きょうもねてる かもめがいます
 酔って候 居酒屋「みなと」

寂しいをして 飲んでたら
おもさっして くれますか
胸に木枯こがらし 抱いてます
一度の思い出 ついばみながら
きょうも泣いてる かもめがいます
 酔って候 居酒屋「みなと」

講評 : 喜多條忠会長
「才能は地方どこにいても輝く」
 今回の大賞は、原 文彦さんの"居酒屋「みなと」"に決まった。ほぼ満票に近い圧倒的な受賞だった。
氏は既に北島三郎さんの楽曲を作詞するなど、もう活動中の作詞家であると言ってもいいだろう。
 独特の情緒と演歌の言葉の決め具合いが絶妙で、構成力も実にしっかりしている。この作品に限って言えば、一番の導入部は、絵が見える港の居酒屋の情景を3行目までに書き切っている。そして二番、三番のアタマ3行はセリフの語りかけで女心の切なさを。5行目の「かもめがいます」の見事な使い方は非凡だ。
 高校の先生で空手の師範。今年定年になったと聞いた。地方で頑張っている会員にも、今回の原君の受賞は大いに励みになると思っている。
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優秀賞

「 ケーキと線香」  池上 二郎

今日はこの子の 誕生日
お前に会いに 墓参り
くずれたケーキと 線香を
供えてはしゃぐ 小さな手
お前が逝って もう二年
蝶が舞います 幼子おさなご

この子初めて 抱いた日は
お前の瞳 潤んでた
小さく生まれた 弱い子を
お前は寝ずに 育てたな
心配ですか 男手は
風が吹きます 撫でるよに

この子背負って 帰る部屋
昔のままさ 何もかも
タオルのかかった 揺り椅子や
しおりを入れた 育児本いくじぼん
お前がここに いるようさ
雨が降ります 泣くように

講評 : 久仁京介副会長
父親が幼子をつれだって、二年前に逝った妻の墓前にお参りする話。
死という現実を知らない幼子が、ケーキをぐしゃぐしゃにして遊び、墓前ではしゃぐ姿は、如何ともしがたい哀しみが漂い涙を誘います。
この子はいま3歳位か、生まれてから暫くこの母親は子育てをしています。
時系列と場面がしっかりとして、物語を印象づける構成と展開が効果的です。
ただし一番1行2行 (この子=お前)と誤解させるキライもあり、一考です。

「五反田の金魚」  祐田 彰

東京五反田 24時
街の片隅 小さな店で
アップアップと 金魚が生きる
恋はしたけど みな破れ
夢はなんにも かなはない
だけど金魚は 鯛になる
海に出るのと 信じてる

気がつきゃ五反田 15年
赤い古びた ステージ衣装
アップアップと 金魚が唄う
遠い故郷ふるさと 想う歌
父は母はと しのぶ歌
しみる演歌の せつなさに
声が震えた 夜もある

初雪舞い散る 目黒川めぐろがわ
ひとりぼっちの 寒さもこらえ
アップアップと 金魚が帰る
金魚すくいのあみ持って
誰かわたしを 救ってよ
破りゃしません 逃げません
誰かわたしを 鯛にして

講評 : 久仁京介副会長
巷でいう水商売と云われる女性をテーマに人生を語った作品。舞台は銀座や赤坂の華やかさとは裏腹な、暗い影を落す五反田の夜という設定。
自らを金魚に仕立て15年の生き様を語りユニークで面白い。
恋や夢に破れ、ふるさとを思いながら帰れず、両親に逢いたくても叶わず、誰かに自分を救って欲しいと願う。
悲哀に満ちていながら、笑いに誘い込む語り口調がとてもよく、まだ希望を失っていない金魚が救いです。
平成版『泳げたいやきくん』などと並べてはいけないか。
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佳作

恋文てがみ」  織田 まり(森脇 真理子)

引出し奥に 眠っていた
父さん母さん ふたりの恋文てがみ
当て字で書いた「小夜奈良」が
母の結びの 言葉です
わたしの知らない 女です

インクの青色あおも 色褪せた
華やぐ若き ふたりの恋文てがみ
ほんのり気取って「小生」と
自分呼んでた 父でした
わたしの知らない 男です

リボンをかけて 仕舞います
父さん母さん ふたりの恋文てがみ
まじめに恋して 添い遂げた
ふたりにもらった 命です
わたしは大事に 生きてゆく


「蟻」   高坂 のぼる(高坂 登)

蟻を良く見ろ 遊んじゃいまい
堅い大地に 張り付いて
せっせ せっせと 汗をかく
そうだ おまえも 男なら
蟻のこころで 蟻のこころで
生きてみろ

悔し涙は 誰にも見せず
あすも黙って 仕事する
天を 仰いで 立ち上がり
そうだ おまえも 男なら
惚れた女を 惚れた女を
守りぬけ

いつかいつかと まさかの夢は
ある日突然 叶うもの
一歩 一歩を あきらめず
そうだ おまえも 男なら
蟻の歩みで 蟻の歩みで
行くがいい


「四万十川へ」  富田 有(富田 明廣)

子供八人 孫十五人
自慢の船を 今日も漕ぐ
今年八十路の 川漁師
苦労語らず 達者なお蔭と
四万十川に 手を合わす

山河相手に 酒くみ交す
お前も俺も 生きている
照る日曇る日 嵐の日
俺の暮らしを 黙って支えた
四万十川と 酌をする

時が過ぎても 変わらぬものは
流れる川と 人の道
耳を澄ませば 父母の
声が心の 岸辺に聴こえる
四万十川よ 有難う


「男のおとぎ話」  二瓶 みち子

かくれてコソコソ うるさい奴が
俺の目を見りゃ すぐ黙る
そうだよ 俺の 前世はよ
北前船の 船底で
ネズミ捕ってた 猫だもの

積荷の塩引 するめに 昆布
見張り守って 十余年
そのあと生まれ 変ってよ
やりたいことの 大方は
男 今日まで やってきた

人間終えたら もいちど猫に
なってみるのも わるくない
今度は少し おとなしく
女の膝に 枕して
日がな一日 寝て暮らす


みちのく意吹いぶき」  堀江 重吉(堀江 馨)

泣いているのか 別れの色か
赤い夕陽が 波間に沈む
ふるさとけて 四年がすぎる
晴れて帰れる その日まで
胸に希望の 苗木を植えて
今日も唄うよ みちのく意吹

風が風生み 届けてくれる
人の心の 優しさ強さ
世間の恩を 抱きしめながら
春のさえずり 胸で聞く
夢にでてくる 囲炉裏の部屋は
笑顔こぼれる みちのく意吹

仮の住まいも わるくはないが
潮の香りの 田舎はいいよ
浮き世の春は 足踏みだけど
きっとこぶしの 花も咲く
胸に希望の 苗木を植えて
今日も唄うよ みちのく意吹

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準佳作

「 桜にかくれた月」  大前 裕子

桜にかくれた 月をさがせば
子供みたいと あなたは笑う
すべてがやさしい あなたのそばで
わたし人生 かざります
香る桜 ゆれる姿に やすらぐ月
あなたは桜 月はわたし

桜はめぐらす 同じ季節に
花を咲かせる 月夜も昼も
あなたに生きてく わたしは決めた
何があっても 平気です
香る桜 ゆれる姿に やすらぐ月
あなたは桜 月はわたし

桜は愛され 月はよろこぶ
夢の時間は 風まで静か
両手つないで 幸せ交わす
空にひらひら 花吹雪
香る桜 ゆれる姿に やすらぐ月
あなたは桜 月はわたし


「牡丹雪」  おの りく

慎ましくたおやかに
牡丹雪舞い散る
儚くも美しい
世界を彩って

形のない愛にそっと
包まれたときに
溢れ出してくる笑顔は
永久とわの記憶

柔らかに穏やかに
牡丹雪揺れてる
広いこの宇宙を
飾るような幻想

瞳映るすべてのもの
受け止めたときに
見えなかった未来がah…
動き出すの

果てしのない物語の
一頁めくり
胸の奥にしまい込んだ
永久とわの記憶

愛の中で・・・


「離れられない秋」  原 文彦

窓辺をたたいた 夏嵐なつあらし
涙がまじった からい接吻きす
ひぐらしみたいに 背中をゆすり
死ぬのもいいと 泣いたやつ
 つらい恋ほど いとしくて
 離れられない 秋になる

花さえ枯れゆく 時期ときを知り
過ぎ去る季節を 追わぬのに
未練に一日いちにち また一日いちにち
つながれ心を さすり合い
 つらい恋ほど くるおしく
 捨ててゆけない ひとになる

窓辺でながめる いわし雲
背中が寒いと ふと思う
何かの約束 ひとつでさえも
したならうそに なりそうで
 つらい恋ほど 愛しくて
 離れられない 秋になる


海開けうみあ夫婦節めおとぶし」  遥 北斗(熊野 敬一)

沖の流氷 遠くに去って
明日は海明け オホーツク
 口の数より魚の数と
 そばおどける 恋女房こいにょうぼ
大漁狙うと 誓ったからは
やって見せるぜ 度胸船

凍る艫綱ともづな 締めなおしたら
神酒みきあおって 夫婦節
 俺の自慢の 女房にょうぼの唄を
 いた鴎が はやしてる
漁火祭いさりびまつりを 迎える頃は
親になるんだ 二人とも

羅臼港らうすみなとに 春風吹けば
 漁師魂りょうしだましい 燃え上がる
 はやる気持ちで 眠れぬ夜は
 惚れた女の 膝枕
心の羅針盤コンパス がっちり抱いて
宝さがしの 朝を待つ


「人情紙風船」  保岡 直樹

あすを祈った 縁日で
買った七色なないろ 紙風船
俺によく似て 軽いねと
空へはじけば どぶのなか
あんたの笑顔が おどけた声が
浮かぶ夕ぐれ あかね雲

つよく叩けば 破れるわ
若い男は 紙風船
浮気相手が お酒なら
いいの寄り道 朝帰り
あねさん気どりで こづかい渡す
それがわたしの 愛でした

しょせん女の 手のひらで
あそぶ男は 紙風船
ばかな気休め あまい夢
風に吹かれて 消えちゃった
ひい・ふう・みれんよ 今でもあんた
満月つきにころがす てまり唄

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